７２歳の超ベテランが引退した。創業社長の同級生。当社に３２年間、数えきれないほど大活躍をしてくれた。
重量物搬出作業では、プレス機の３００ｋｇナットが１カ所だけ回らず、数時間格闘したことがあった。それを取らなければ分解ができない。真夏のその狭い 工場は気温４０度以上で、滝のように流れる汗はとまらない。周りはホコリや余った原料で、お互いに顔を見合わせると全員真っ黒だった。昼にはみんな疲労が ピークに達した。どうしても回らない。万策尽きた・・・と言う雰囲気が漂った。
しかし超ベテランは、スパッとやり方を切り替えて、かなり荒っぽい方法ではあったが、クレーンとフォークリフトを駆使し、分解せずに強引に引張り出してしまった。その状況判断と頭の切り替えの鋭さは見事だった。
私は２０年間、いろいろと一緒に仕事をさせてもらった。時には強引に、時には鳥肌が立つような名案で、無理難題を克服する場面を何度も目の当たりにした。困難な状況を克服した後ほど、清々しいものはないことを体感させてくれた。
仕事と言うのは「おもしろいものだなぁ～」と、教えてくれた超ベテランに感謝している。他界して２６年、親父の残してくれた宝のように貴重な存在である「福田実さん、長い間お世話になりました。本当にありがとう」

のどかな景色で１００ｔオールテレーンクレーン作業中