先月、突然電話があった。

「富山（仮名）といいますが、大沢さんバラセメントのタンクあるでしょう」

「はい。セメントじゃないですが……あります」

「うち3台あるんだけど、もうやめるんで、それいりませんか？」

「まぁ欲しいのは山々ですが……値段もあるし……その前になんでうちの電話とか仕事を知ってるんですか？」

「いや～調べたんですよ。大沢さんのトラックとよくすれ違うので、大きいタンクを使ってる人はあまりいないでしょう」

「そうですね。じゃぁ一度、見に行きますので……」

　と言うわけで、数日後見に行った。

駐車場にはスーパーグレートのジェットパックが3台駐車してあった。 間もなくするとピカピカのセルシオが現れ、裕福そうな60代のおじさんが降りてきた。

「大沢さんですか、わざわざ来てもらってすいません」

「富山さんですか。このトラックよくうちの会社の前を通ってましたね」

「燃料も上がったし、私も年なので……運転手がみんな40代半ばなんです。 私が70になると運転手は50代半ば。その時に廃業したら運転手がどこにも行けない。借金もないし、やめるなら今だと」

「で……なんでうちにお話を……買取業者なら喜んで高値で買ってくれるでしょう。極上車ですよ」

「業者には売りたくないです。使ってくれる人に売りたい。3台まとめて買ってください」

「ん～急に3台もいらないんだけど……まぁ値段次第ですね。希望はどれくらいなんですか」

「００００万円でどうですか」（新車１台分程度）

「とりあえず、考えてみます」

　……会社に帰り、あまりに出来過ぎた話をよく考えた。 自分で言うのも変だけれど、さすがに人がいい私でもちょっと疑った。

何しろ平成17年車、14年車、11年車。 全国探しても、全く見つからない19リューベのタンク。

しかも当社が愛用する極東ジェットパック。 新車1台分で3台も……。

今、スペアで使っているものが、昭和60年、昭和62年、平成元年、平成3年。

混載防止と車検や故障等の時には、どうしても予備車が必要不可欠。 フル稼働しない車に投資できず、代替したくてもできずに本当に何年も困っていた。

「よし！　決めるか……」

　そして購入を決めた。

トラックはもうやらないからということで、インパクトレンチ、エンジンオイル、スペアタイヤ、ホイル、燃料タンク、ステンレスフェンダー等々も、たくさんいただいた。

過日、遊園地のジェットコースターの金属疲労の事故のニュースを見てから「古い車を大切に使う時代じゃない」ということが、頭の隅から離れなかった。

こんな形で、天から降ってきたようなこの話に、とても不思議な気持ちでいっぱいだ。

わざわざ、当社を探してまで連絡をいただいた、富山様にはこれからも、お付合いをさせていただきたいと思う。 そして、そんな貴重なつながりから、やってきたジェットパック3台を大切に使い続けていこうと思う。

燃料が高騰し、厳しい台所事情ではあるけれど、窓の外を眺めながら「まだまだ世の中捨てたもんじゃないかもなぁ」等と思い巡らせる梅雨の空だった。